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物書き玖美のありゃりゃな生活

もの書き・編集者・校正者の、本と言葉と日常。ペンネームは亡き祖母の名前。

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カソウスキの行方 (2008.08.31)
評価:
津村 記久子
講談社
¥ 1,470
(2008-02-02)
Amazonランキング: 95203位
Amazonおすすめ度:
独特の味わいに癒される。
律義者は電子ガメの夢を見るか
カソウスキの行方、気持ちの行方
私は自己憐憫が大嫌いだ。
当然、自己憐憫に満ちた小説も大嫌いだ。
そして現代日本小説に多いのがこの自己憐憫と、本当に些細なことをとりあげて「私は他人とは違うんだ」と考える特権意識、あるいは被差別意識。

以前読んだ、わりと有名な現代作家の小説では、「指紋がないから他の人と仲良くできない」という主人公が出てきてのけぞった。
……友人の指紋なんて見たことがないが。それともものすごい指紋フェチの主人公か? 指紋を見てからでないと付き合い方を決められないほど。
と、思っていたら主人公は喫茶店のアルバイトで、洗い物のしすぎで指紋が消えただけなのだった。そして同僚のことを「要領がいいから私に洗い物を押し付けてる」と評している。
典型的な被差別意識と自己憐憫だ。
そして結局、要領のいいだけに見えた同僚も実はいい人だった、みんな一生懸命生きてるんだ……と、実に「爽やかに」終わる。
私は心底、疲れた。
それ以来現代作家の小説を読む気がしなくなるほど疲れた。


この『カソウスキの行方』は、本当に本当に久しぶりの現代小説になる。
禁を破った(というほど大げさなものでもないが)理由は単純で、RSSリーダに入れてチェックしている書評ブログ(と言っていいのかどうか)でとりあげられていたからなのだ。
「本屋さんへ行こう!」
ただ、定価で買う気がせず本屋さんには行かなかったので、ちょっと後ろめたいのだが。

この小説には、大嫌いな「自己憐憫」「被差別意識」が珍しく出てこなかった。
出ていてもそれを相対化し、自嘲している主人公だった。
その一点だけで評価できる。

さらに、3編収録されている小説のキーワード(私が勝手に考えたもので、読む人によっては少し異なるかもしれない)がそれぞれ「仮定」「ポイント」「数値化」と、およそウェットな文学とはほど遠い、数学的とも言えるものであることにも好感が持てた。
一生懸命生きてるだあ? 笑わせるな! 当たり前だ! 生きてるだけですなわち一生懸命なんだ! 今さら真理でも発見したかのごとくに言ってるんじゃねえ!
と、常々苦々しく思っていた私に、この数学的ドライさは大変心地よかった。

一生懸命生きているのは何も、障害や難病、深いトラウマを抱えている人ばかりではない。
さらに言えば、一生懸命生きてるからと言ってマイナスの考えや感情を持たないわけがない。それは生きていることと一体なのだから。
ごく一般的な市井の人が、小狡かったり自嘲したり見栄を張ったりしながら、それでも他人任せではなく、自分自身で自分の感情に始末をつける話。
そのような話は、大々的な感動物語にはなりにくいけれど、より「生きていること」に近い気がする。
| 本について語る | 15:47 | comments(0) | trackbacks(0)
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